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「こんな骨董品を何でいまさら」と思うかもしれませんが、思うところがあって買ってみたヘッドホンです。 思うところと言うのはyoutubeでヘッドホンの空気録音している人がいて、その中でDT880が一番まともな音を鳴らしていたからです。とても自然な音で驚いた。自然さという意味では他のヘッドホンが明らかに不自然に聴こえると言うくらい自然な音だった。 T1やDT1990もあったが、音色が抑圧された感じがあって、恐らく高解像なのであろうがその代わり音色が犠牲になっている感じの鳴り方だった。T90は良い線いってたが高域に癖があって声がハスキーだ。DT880はベールが薄っすら掛かる感じはするがそういった悪癖を感じることはなかった。 ただ経験上、空気録音は万能ではなく、例えば解像度の違いはほとんど分からないです。音色の微妙な機微とかそういったことも全くではないですがほとんど分かりません。相当な差があればわかりますが、録音に使われてたHD800SとかK812,utopiaなどのハイエンドのヘッドホンと1.5万のK701(これは安くても4-5万クラスの音質はするんだけど)でも解像度に関しては大差ない感じでした。むしろK701の方が素直で良い音と感じたくらい。 なぜこういうことがおきるのかと言うと、まず録音する段階で音が濁ります。次に録音したものを再生した段階でも音が濁るわけです。音の良し悪しをノイズの少なさととらえるなら、音が良いヘッドホンの方がノイズが少ないわけですが、録音と再生の段階で濁りが大量に乗ってくるので、このノイズ差を聴きとるのは極めて難しいこと言うことになります。 また録音だとディティールが潰れるので、聴いてて気持ちいとかそう感じられる成分が減っていき、相対的に悪癖が目立ちやすくなります。密閉タイプのヘッドホンの録音を聴けばわかりますが、密閉型ヘッドホンの録音は箱の音がひどいもんです。 実際に聴けばディティールが再現されるので、聴いてて良いなと思える点もたくさん出てきます。そうなると密閉の癖も録音ほどは気にならないし、ハイエンドとの比較でもK812の方がK701では潰れている音が再現されているとなって、K701の方がK812よりも音が良いとはならないでしょう。もっとも録音された癖もまた事実ではありますから、実際に聴いてもK812固有の癖は付いて回ると思いますが。 空気録音は4割くらいは参考になっても残り6割は実際に聴いてみないと分からないものです。雰囲気とかは分かりますが。録音を100%鵜呑みにする人がいるといけないのでリンクは貼りませんが気になる人は検索してみてね。 それで録音越しにでもDT880のポテンシャルの高さがひしひしと感じられたので、T1でもDT1990でもなく、あえてDT880を買うことにしました。DT880の音が頭から離れなくなった。いま私が追及しているのは解像度ではなく癖の無い素直な音なのでDT880がドンピシャだったわけです。録音聴かなかったら、DT880は比較的下位のグレードだから「ベイヤー買うならT1かDT1990あたりにしよう」とDT880は初めから眼中になかったでしょう。それで、「DT1990はケーブルが片出しでケーブル交換する上で左右対称性がないから良くない。却下。」「T1は3rdは評判良くないな。。。そもそもベイヤーのデザインはかっこよくないし、ベイヤー買うのはミーハーっぽいから却下www」と何かと理由をつけて結局ベイヤーのヘッドホンは買わなかったでしょう。そんな私でもDT880には縁があったわけだ。 ところでDT880には32Ω,250Ω,600Ωの3つのバージョンがあります。このあたりは音がどう違うのか悩むところではありますが、InnerFidelityの人が答えを書いてくれていました。 ここによると、600Ωと250Ωでは傾向はほぼ同じ、ただ高音のクオリティーが600Ωの方がほんの僅かだけど良いとのこと。一番音が良いのは600Ωだが、据え置きのアンプでないと音量が取れないとのこと。32Ωは携帯機でも音量取れるが、600Ωや250Ωと比べるとダウングレードした音とのことだ。こうしたはっきりした物言いは迷いがなくて良い。このはっきりした物言いに感服したので、600Ωを買うことにした。 録音ではHD600やHD800,K701,DT880が比較的素直に聴こえました。安い奴の方が素直に聴こえるから不思議ですよ。ではDT880はT1よりも音が良いのか?という点に関してはT1は試聴しかしたことないし、DT880は聴いたことがないので何とも言えません。ではHD600とHD800はどちらが音が良いかで言うとHD800の方が良いでしょう。HD600とHD800ではかなりの差があります。ほとんどの人はHD800の方が良いと言うでしょう。でも録音ではHD600の方がより常識的で良い音に聴こえました。録音ではHD800の解像度の高さや音場が出ないからです。もっとも録音でHD600の方が良く聞こえると言うことはHD600でもHD800を部分的には凌いているとも言えるのですが。 そういうことを考えると、もしかしたらDT880も録音ほどは良く聴こえないかもしれません。でも良いんです。私には無敵のバーンインノイズがあります。このバーンインノイズはSRH1540をEPT-700が濁って聴こえるレベルの音質まで引き上げられます。「音を鳴らしただけでそんなに音が良くなるわけないだろ!」と思われるかもしれないけど、振動板に直接働きかけるのでアホみたいに効果があります。このバーンインノイズでヘッドホン同士の解像度差はほぼ無意味と思えるくらいの解像度と奥行きは出るので、そこに拘ってもしょうがないかなと思っています。拘っているのは音色で、バーンインノイズもそこに拘って開発しています。解像度は音色を良くすると勝手に上がってしまうので、副産物的なものです。最近は「nightowl carbonにしてもSRH1540にしてもバーンインノイズで音質を上げてるけど箱の音はしちゃうよね」とそこが気になってきました。HD650(バーンインノイズを流していない)と比べると、解像度や表現力は圧倒的に上で、開放型と密閉型の差をものともしないくらいの差があるので、自然さにおいてもHD650より上です。ですが、HD650の音を聴いていると箱の音がしない分、バーンインノイズを流したら、nightowl carbonやSRH1540よりも素直で自然な音が鳴るだろうなという予感がします。HD650をちょっと低く評価しすぎたかな?といまさら再評価しています。 音色を追及する上で、音の素直さや自然さはすごく大事で、そこいくとDT880は録音ではかなり素直な感じだったので「仮に音が大したことなかったとしても、バーンインノイズで化けるだろう」と踏んでいます。たぶん音は良いだろうけどね。 追記_20210319 ・・・と上のようなことを1ヶ月前に書いたのだが、「ひと月前に注文したんだけど全然来ないな。。。」と思っていたら、DT880 Edition/600が届いたのでさっそく聴いてみた。 箱を見て気づいたのですが「DT880 Edition」までが機種名で、その後の600とか2005とか32Sとかがバリエーション名らしい。250Ωが2005なのは良く分からない命名ルールだ。ちなみにコードのプラグに600Ωと刻印されている。それ以外でバリエーションが分かるところは無いようだ。 全くエージングしてないけど、結論から言うと、HPT-700と同様に「万人に無条件に勧めて良い」レベルのヘッドホンだと思いました。 とにかく人の声が自然に聴こえる。この点においてはHPT-700,HD650やnighthawk carbonと比べても優れていると感じる点だ。ただ質感という点においてはHPT-700より良いがnighthawk carbonには及ばないと言う感じだな。良くないと感じた点は、音がやや丸めで、打楽器や弦楽器には鮮烈さが足りない。音の芯が弱くて楽器の音がちょっとふぬけた感じの音になってしまう。音の芯の弱さはHD650にも付いて回る問題ですが、HD650よりはマシな感じです。あと他のレビューにあるように高域がシズルな感じがします。悪い言い方をするとシンバルなど金物の音がチカチカうるさいしサ行が掠れる。今どきサ行が掠れるのも珍しい。高域の質感はあまり良くない印象。 解像度はHPT-700と比べて若干落ちるかも、HD650みたいに音がのっぺりして細部が潰れる感じがする。解像度はHPT-700がHD650の+240段上と言った感じだとすると、DT880 Edition 600はHD650の+140段上と言った感じです。HPT-700とHD650の間くらいでしょうか。解像度は現状でもかなり高いと思います。まだ全然鳴らしこんでいないのでまだ向上するでしょう。奥行きは9mで36mと評価しているHPT-700には及ばない印象です。それでもHD650より良いですがね。おそらくエージングするとHPT-700と似たような音質レベルになるんじゃないかな?と思います。 文字に起こすと意外と悪いところも書いているから、中には大したヘッドホンじゃないと思われる人がいるかもしれませんが、個人的にはとても良いヘッドホンだと感じています。高域の質感は気に入らないけど、HPT-700にもこの程度の欠点は存在するし、「人の声が自然に聴こえる」という点においては群を抜いているので、それだけでもこのヘッドホンを選ぶ理由にはなるでしょう。 高域のシズル感や音の芯の弱さは録音では感じなかった点ですが、これはエージングの具合や再生環境によるものかも。現在PMA-60で鳴らしていますが、これでもかなり良い音が鳴っているので、鳴らしにくい(なかなか良い音が出ない)ヘッドホンと言う感じはしません。電圧さえ稼げればあとはそれなりに鳴ってくれる感じです。なので600Ωだからと言って構える必要はないでしょう。ですがアンプのパワーは必要でPMA-60だとぎりぎりで、通常ボリューム全開まで回すことはありませんが、録音レベルの低い音源だと全開まで回す必要があります。音量を取る基準として3Vrmsを出力できるアンプは最低限必要でしょう。ただし、PMA-60はボリューム最大で無負荷で3Vrms,500Ω負荷で2.4Vrms掛けられるのですが、このボリュームまで上げると音が歪んでしまいました。録音レベルが低い音源だと歪まないですし、ここまで大音量で鳴らすことはないと思いますが余裕を見てもっとパワーのあるアンプの方が良いでしょう。 エージングしたらまた何か書き足そうと思います。 追記_20210325 うーん、SRH1540と勘違いして間違ってDT880 Edition 600にバーンインノイズを流してしまった。しかもフルパワーで。 はぁああああああああああああああああ。せっかく買ったのに・・・取り寄せに1ヶ月もかかったのに・・・何もしてない状態のDT880 Edition 600の音を聴いておきたかったな・・・ 嘆いてももう手遅れなので、ここに50時間くらい普通の音楽を流した時の印象を書いておこう。幸い最初から結構良い音で鳴っていたので大体の印象と実力は分かった。 通常より+6dB程大きい音量で鳴らしていたら、シズル感は多少収まってきて、高域の癖はなりを潜めてきた。だが、まだ高域はやや安っぽい感じで、金物の質感がいまいち。高域の質感ではHPT-700,HD650,nighthawk carbonに劣っている印象。高域が強いと言うよりは歪が乗っている感じ。いかにも共振で高域出してますって感じがしてそれが鼻につく。サ行もHPT-700やnighthawk carbonと比べると掠れる感じ。まぁnightowl carbonも初めは高域がきつかったりしたのでこれはバーンインノイズで何とかなるかもしれない。。。なると良いな。現状では高域の質は比べるとHPT-700やnightowl carbonには及ばないね。上では音の芯が弱いとか書いたが、エージングで解消されてきた。 また、ボーカルの質感は群を抜いてよい。高域の癖を除けば音は非常に自然でこのクラスのヘッドホンの音とは思えないレベルだ。 傾向はニュートラルだがややソフト傾向。そしてややブライト。閉塞感なし、詰まり感なし。抑圧感なし。解像度はHPT700の+20段程上。と言うことはHD650(標準ケーブル)の+260段上ってところ。nighthawk carbonのちょい下レベル。奥行きは30m。解像度や定位に関してはHPT-700やnighthawk carbonに比肩していると考えて良さそうだ。 HD650と比べても高域の質を除いてそれ以外のすべての面で優っている。DT880 EditionをHD650と同格の音と評価している人がいるがそれは過小評価しすぎだろう。 音像をはっきりさせないという点ではHD650に似ているのだが、HD650よりもクリアだし鮮烈な音が出る。そして高域の質感を除けばHD650よりも自然な音が出る。HPT-700のような音痩せも起きない。まぁ、ちょっとレンジが狭いし、高域が安っぽい感じがするのだが、それを補って余りあるものを持っている。 では買いかどうか? HPT-700と同レベルのヘッドホンなので買いと言って良い。ただし、「誰にでも無条件に勧められる」は言いすぎたかもしれない。なぜなら上で書いたように高域の質が良くないから。シンバルなど金物の質感が出ない。サ行の掠れはマシになってきたが、いまだに残っている。このあたりはネット上のレビュー見る限りは多少マシになるにしても普通に鳴らしてる限りは消えないんだろうな。だけど上の領域はいまいちだけどそれより下の領域は驚くほど良い。ボーカルがとても自然だ。全体的には「ヘッドホンはかくあるべし」というお手本のような音が出る。初心者が買って1個で済ませるのも良し。マニアなら基準として持っておくのもヨシ。また、HD650の音に不満があるならこれを聴いてみると良い。 ※比較に使ったHD650,HPT700,nighthawk carbonは普通の音楽を少し大きめの音で鳴らしたもの。バーンインノイズは使わず特別なことはしていないものです。nighthawk carbonだけは8000時間近く鳴らしていますが。 ※追記_20220423 追記_20210325で書きたいことは書いちゃってるので追記することはあまりないのですが、1年使って良いところ悪いところを追記すると。 ・ここが良くない 作りが良くないです。スピーカー部を吊るしているハンガーは金属を打ち抜いた後バリが残ったままです。このあたりは安いから仕方がないかなと思うのですが、許せないのが次です。 ヘッドバンドアジャスターのロックは一応ついているようなのですが緩くてすぐズレます。しかも私の持っている個体は右側が極端に緩いんだよね。個体差の大きな部品を使っていると言うことです。しかもヘッドバンドを調整できる長さがSHURE SRH1540並にしかありません。人によっては長さが足りなくなるでしょう。ここは使っててSRH1540並にムカついてくる。バリが残ったままなのはまだ良いのですが、道具としての基本機能まで削るのは良くないですよね。これ本当に老舗が作ったヘッドホンなの?こと使い勝手に関してはHD600/HD650の方がよっぽどまともです。このヘッドホンはドイツ製なのに適当にしか作られていません。完璧主義のドイツ人と言うのはただの想像上の存在でしかないようです。 ・ここが良い 音質。高域と音像は良くないのだが、ボーカルの自然さと解像度は群を抜いている。ただ私はこのヘッドホンの高域は我慢できないので、私がベイヤーの社長ならすぐにでも振動板素材の変更をするだろう。ベイヤー的には「DT1990PROやT1買ってくれよ」ってことなんだろうけど、この商品は「音質以外は全て無視。音質だけに全力投球」と言う商品なので「音質に全力投球して許容しがたい欠点があるのはどうよ?全力投球した意味がないだろ?」と考えてしまう。 ちなみにバーンインノイズが完成してそのテストに使っていますが、バーンインノイズを流すと音像や高域はだいぶマシになるけど、癖は僅かに残ってしまっている。パワーが入らない割には(それでもメーカースペックの2倍の200mwは入れてる)、音質は結構よくて解像度もnightowl carbonには勝てないけど、SRH1540のちょい下くらい。ボーカルの自然さに関してはnightowl carbonやSRH1540よりも良い。と言う感じ。 解像度で言うとnightowl carbonは「iFi micro iDSD Diabloでバランス駆動したHD650」の倍くらいのイメージ。DT880E/600はnightowl carbonの8割くらいの解像度です。と言うことは「iFi micro iDSD Diabloでバランス駆動したHD650の」の160%の解像度で鳴っている感じなので、パワーが入らないわりになかなか良い感じで鳴っていると思います。DT880E/600の元のポテンシャルが高いからでしょうね。 と言うかバーンインノイズ流したnightowl carbonが「iFi micro iDSD Diabloでバランス駆動したHD650」のたった倍程度しか引き離せてないって、HD650のバランス駆動ってすごいと思う。Diabloの性能が良いからかもしれないけどね。 バーンインノイズを流した状態だと解像度はnightowl carbonとDT880E/600では2割くらいしか差がありません。nightowl carbonとSRH1540では1割くらいしか差がないでしょう。空間表現も似たり寄ったりです。大局的に見れば解像度や定位では大差ないのですよね。ではどこに差があるかと言うと、「自然さ」「違和感なく耳に入ってきて受け入れられる音色」でしょうか。そういった総合力ではnightowl carbonが一番で、DT880 Edition 600やSRH1540はやや劣っているかな。確かにボーカル帯域に限ればDT880 Edition 600はnightowl carbonを凌駕するのですが、音の実在感や金物叩いた時の質感とかそう言った部分では劣ってしまっているんですよね。バーンインノイズを鳴らしても、そう言った欠点がどうしても気になってしまう。今鳴らしている音質レベルだと、音質を追及する上で欠点をできるだけ無くさないといけない局面で、「欠点を抱えた特化型」では+に働かないと言うことです。 ではDT880E/600は買いかどうか?上では「HPT-700と同レベルのヘッドホンなので買いと言って良い。」と書いているのだが、現在は少し意見が違う。たしかに、この価格帯でこれほどの表現力を備えたヘッドホンはそうないだろう。これは現在でも変わらない意見だ。だが使ってみた立場で言うと、このヘッドホンを買うのは欠点を許容して使うと言うことなので打算的だ。それならもっと上のクラスのヘッドホンを買った方が良いんじゃないの?と考えてしまうわけだ。もちろん世の中には予算と言うものがあるのも分かるのだが、予算で妥協するのならもうK701で良くない?と思ってしまう。まぁ欠点を許容できない完璧主義者には合わないヘッドホンだよね。 ※追記_20220821 DT880E/600はバーンインノイズのテスト用に使ってたんだけど、5Hz入った波形突っ込んだら壊れた・・・しばらく問題なく鳴ってたんだけど20時間くらい鳴らした段階で右から音が出なくなった。さすがに最大入力で5Hzはまずかったらしい。DT880E/600って最大入力でも大した音量出ないからオッケオッケーと思ってたんだけどな。どうも振動板が耐えられないというよりもコイルが大振幅で疲労して切れるという感じらしい。 思えばDT880E/600はついてないヘッドホンだったな。初期エージングの段階で間違ってバーンインノイズ鳴らしちゃったし、最後はテスト中に破壊されたか。それでもバーンインノイズのテスト用としては役に立ってくれたか。どれだけ癖が抜けるかの確認もできたしね。いままでありがとね。 ※追記_20220918 先日ドライバーが壊れてしまったDT880E/600。せっかくなので分解してみました。 イヤーパッドを外すと、スポンジが見えます。 そのスポンジを外すと、音響レジスター用の紙とさらにドライバー前にスポンジが貼ってあるのが見えます。 2枚目のスポンジを外すと、音響レジスター用の紙はドライバー前まで貼ってあることが分かります。この手法はHD650やSRH1540にも見られますが、DT880E/600の場合ドライバー全体を覆うように貼られています。HD650やSRH1540はドライバーの外周を覆うように貼られています。ただしDT880E/600も紙は2重構造になっていてドライバーユニット前の紙は薄くなっています。素人考えではユニットの出音が完璧ならばこんなもの必要ないように思うのですが、何かしらの補正をかける為の部品なのでしょうか? バッフルごとユニットを外した状態。音響レジスター用の紙はバッフルの裏面表面と2重に貼ってあります。ハウジング内部は中心をくりぬかれた吸音材が入れてあります。個人的には後ろに抜けていった音を耳に返さないためには吸音材も使わず吹き抜けにしたほうが良いのでは?と思うのですが、そんなこと言ったら開放型のDT990買えって話ですよね。このヘッドホンはユーチューブで音が突き抜けて良かったので買ったのですが、構造見ると無駄な部品が多いように見えて納得できない感じです。裏を返せば、それだけ細かく調音されていると言うことなのでしょうが。ケーブルは3芯、渡り線が2芯でクリップで止めてあります。まぁ、どこにでもある構造のケーブルです。 ハウジング内の吸音材も2重構造になっていて、外の大きな吸音材の内側に小さめの吸音材が入っています。 全ての吸音材を外した状態。吸音材を貼り付けるシェルにパンチングメッシュのほとんどが覆われていて吹き抜けにはなっていません。本当の意味での半解放のよう。吸音材は糊で貼り付けられていました。 ドライバーユニットをバッフルごと外した状態。裏表に貼られていた紙も剥がしてあります。 ドライバーユニットをバッフルごと外した状態。ツメ3個所で止められています。 ドライバーユニット本体。ダイアフラムは半透明の青色で表面にボコボコした凹凸があります。これの材質を変えれば高域の癖減らせるのに・・・と思ってしまいます。ちなみにそんなに硬い素材ではないです。やや厚めのビニール袋のような硬さです。可塑剤が含まれているのかややべた付く感じがします。ソフト素材なのにキンつくんだよね。ビニール袋だってカシャカシャ耳ざわりな音出すからね。素材選びって難しいんだろうな。 切り取ったダイアフラム。驚くことにちゃんとボビン巻きです。ボビン巻きボイスコイルを謳っていなくてもちゃんとしているところはボビン巻きにしているんですね。画像では光の加減でコイルが太く見えますが、実際に見ると肉眼で確認するのが不可能なほど細いです。これは負荷掛けたら切れちゃうよね。 ダイアフラムを外した状態のドライバー。マグネットキャップに4個所切り欠きがありますが、なぜついているのかは不明。空気の流れをスムーズにしたり、渦電流を抑制したりそういう効果があるんでしょうかねぇ?ユニットの外形は45.3 mm, 振動板の実効直径は40.2 mmでした。 ドライバーユニット裏側。なぜか網が張ってあります。しかも別部品で付けてある。このヘッドホンはハウジングのメタルパンチにもゴミよけが貼ってあるので、ゴミなんて入るはずないのですが、なぜついているのか不明。DT990,DT880,DT770はユニットは同じでその他の調音部品で違いを出しているそうなのでその関係でしょうか。個人的には音質的には頂点は一つで、あとは用途の違いだけ。って考えなので、一番高音質が得やすい開放型のDT990と遮音性が高い密閉型のDT770があれば十分で、半解放型DT880はラインナップ上必要だったのか疑問に思えてくる。フラッグシップのT1/T5, ハイエンドのDT1990 PRO/DT1770 PROにも半解放はラインナップされていないじゃないか。でもね、youtubeで聴いた時にDT880の音に惚れこんじゃったんだよね。 ドライバーユニット裏側。網を外した状態。網は完全に別部品で、これ装着すると空気吸排出用の穴も少しだけ塞がれてしまうし、はじめからこの網を装着すること前提で設計したってわけではなさそうです。そう考えると後付け感を感じる作りですねぇ。
2021/02/09 執筆
2021/03/19 追記
2021/03/19 公開
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